1.はじめに 我が国の技術科教育においては、創造性の育 成を教科の中心的課題として掲げ、教育・研究 が進められてきた1)。これまでものづくりなど の技術的な学習活動が問題解決力や創造性の育 成に高い効果を有することを、多くの研究が明 らかにしてきたが2)3)、創造性を高める教育課 程や学習者の学習改善に関する研究は依然とし て少ない。とくに学習過程の基本となる設計、 製作のプロセス(以下、デザインプロセスと呼 ぶ)については、これを狭義の設計として扱い、 製作活動とは別に扱う場合が研究、実践ともに 多く、学習指導に活かすデザインプロセスに関 する研究はほとんどないのが実情である4)。 技術活動の基礎となっているデザインプロセ スは、単なる学習過程や単元、工程というだけ でなく、思考技術を育成する重要な学習の対象 の一つとしてとらえることができる。デザイン プロセスを理解することで、生徒は技術的な問 題解決能力を高め、さらに日常的な問題、場面 で適用しようとすると考えられる。すなわち、 技術科の学習場面におけるデザインプロセスの 役割と、問題解決のモデルとしてデザインプロ セスを生徒に提示し、生徒の活用能力を図るこ とは、創造性や問題解決に関わる思考技術の養 成につながると考えられる。 そこで本研究では、技術教育においてデザイ ンプロセスの学習が創造性、問題解決力の育成 に対してどのように貢献するかについて明らか にするための基礎資料の収集を目的として、中 学校における試行的な実践を通して検討を試み た。具体的には、デザインプロセスの理解を促 す2種類の指導過程を計画し、それぞれ異なる 群で試行した結果から、1)デザインプロセス 指導の効果、2)適切な指導過程とプロセスモ デルの検討、3)技術的問題解決力の育成への 効果について検討を行った。 2.デザインプロセスとは何か 設計という言葉に対する誤った理解やその定 義の多様性から、設計活動本来の価値の重要性 は十分認識されているとはいえない。一般に広 く知られている設計は、辞書5)にあるとおり 製図を書くことそのものとして捉えられる傾向 がある。一方、工学における設計にはさまざま な定義があるが、設計とは物質的なものを対象 とするのに限らず広く人間の営みそのもので あり、目的的・創造的な活動であるとされてい る6)7)。すなわち狭義の設計(図面化するこ と)を超えた、創造の過程(プロセス)と捉え ることができる。 近年の技術教育では、この創造の過程が技術 学習の最も重要な内容の一つとして扱われる事 ─ 33 ─
技術教育におけるデザインプロセス学習の意義について
浅田 茂裕
*・佐藤 容一
**・柴田 典夫
**・土肥 俊郎
*** キーワード:ものづくり学習、デザインプロセス、問題解決力、有用感、設計活動 埼玉大学紀要 教育学部,59(1):33─42(2010) * 埼玉大学教育学部技術教育講座 ** 埼玉大学大学院教育学研究科 *** 九州大学工学研究院が多い。例えば英国では、一連の学習過程(デ ザインプロセス)を通して、創造性を育むこと が目指されている8)。英国におけるデザインプ ロセスは、思考や創造、発見、予測、実験、製 作の決定、絶え間ない評価、必要性の理解、作 品の修正などの創造的な技術プロセスとその活 動の総体を意味する。また、単に学習過程と言 うだけでなく、その過程を経験し、問題解決の 方法として学習対象として取り扱われる。そし て、「他の分野で学習した知識とスキルを生徒 が結合する際、あるいは生徒が新しい問題の解 決策にそれらを適用するときに、価値ある方法」 とされ、学習者にとっては転移可能な思考ツー ルとして用いることのできるものとされる9)。 デザインプロセスに関する研究は、 Layton10) が提唱した、技術的問題解決のプロセス、<必 要性の調査>−<必要性の詳述>−<アイデア の考案>−<アイデアの選択>−<製作>−< 製作品の試験>の6段階モデル、がよく知られ て い る。こ の モ デ ル は 英 国 の 技 術 教 育、 「Design&Technology」に強く反映されている。 またHachinsonは技術教育におけるデザインプ ロセスの重要性と有効性を指摘し、<分析と調 査>−<設計の枠組み>−<情報の収集>−< 代替案の生成(選択肢の作成)>−<最善策の 選択>−<工程の検討>−<プロトタイプの作 成>−<実験および評価>−<再設計/再実行 > で 構 成 さ れ る 閉 鎖 環 モ デ ル(Closed-Loop Model)を提案した11)。このループモデルは工 学的過程にも適用可能なモデルであり、技術教 育における代表的なデザインプロセスの一つで ある。 3.学習対象としてのデザインプロセスの 検討 前述の通り、設計(デザイン)は、技術的な 活動の基礎であると考えられ、中学校技術・家 庭科技術分野(以下、技術科とする)の学習に おいても重要視されてきた。現行学習指導要領 においては、技術的な課題解決能力の育成が示 され、教科書上にも課題解決の過程についての 記述が見られるようになった。例えばT社教科 書では、<問題発見>−<計画>−<製作・実 行>−<評価・反省>−<次の問題への取り組 み>の5段階モデルが例示されている12)。 そこで筆者らは、実践対象校で使用されてい るT社教科書記載の技術的課題解決の過程(A モデル)と、Aモデルに、Hachinsonのループ ─ 34 ─ 表2 生徒に提示したデザインプロセスモデル(Bモデル) 説明 プロセスの構成要素 問題に気づき、把握する。生活 をふり返り、自分の願いとのへ だたりを理解する ①問題の発見 解決するための、計画や見とお しを立て、方法や手段を考える。 何をしなければならないのか 解決に必要な情報を集める できるだけ多くの選択肢を挙げる。 選択肢の中から最もふさわしい ものを選ぶ。 模型や設計図によって計画をわ かりやすくまとめる。 ②計画 解決の方向性決定 情報の収集 選択肢の探索 解決策の選択 計画の具体化 計画にもとづいて、実行する。 場合によっては、途中で計画を 見直すこともある。 ③製作・実行 計画や実行をふり返り、評価・ 反省する。 ④評価・反省 時間や材料があれば問題点を修 正する。 ⑤再 設 計 表1 生徒に提示したデザインプロセスモデル(Aモデル) 説明 プロセスの構成要素 問題に気づき、把握する。生活 をふり返り、自分の願いとのへ だたりを理解する ①問題の発見 解決するための、計画や見とお しを立て、方法や手段を考える ②計画 計画にもとづいて、実行する。 場合によっては、途中で計画を 見直すこともある ③製作・実行 計画や実行をふり返り、評価・ 反省する ④評価・反省 ⑤次の問題への取り 組み
モデルの要素を加味して作成した詳細な過程 (Bモデル)をデザインプロセスの例として生 徒に提示し、生徒の学習過程の変化や意識につ いて検討した。授業で生徒に提示したモデルを 表1、表2にそれぞれ示す。両モデルは基本的 に5段階であり、計画段階の要素においてサブ プロセスが示されているのがBモデルである。 また各プロセスの内容は、Bモデルの方がより 詳細である。なお、生徒にはこのモデルを図1、 図2のような形式で示した。Bモデルの方がよ りループモデルを意識した形状となっている。 ─ 35 ─ 図1 デザインプロセスモデル(Aモデル) 図2 デザインプロセスモデル(Bモデル)
3.実践と調査の方法 3.1 試行授業の題材設定と指導計画 題材を「風力発電機用の風車の製作」とし、 学習活動として筆者らが自作した風力発電機の 風車部分のデザイン活動を行わせる指導計画を 作成した。生徒は5∼6名で構成される班ごと に、水平軸型・垂直軸型のいずれかの風車を選 択し、風車部分の形状、寸法、材質について、 仕様書や設計図を制作し、木材、発泡スチロー ル板などの材料を用いて製作活動を行った。こ の教材の特徴は、発電機部分は共通で使用し、 生徒が製作した水平軸型、垂直軸型の風車いず れも取り付けられることである。また、発電機 としては太陽電池用モーターを使用しており、 送風機によって回転する風車の開放電圧を測定 することが可能である。また解法電圧から、生 徒自身で製作した風車の性能を具体的に評価で き、改良の活動につなげることができる。使用 した教材(風力発電機)の概観を図2に示す。 次に本実践の指導計画を表1に示す。まず 「単元1.電気エネルギーの利用と現状」は、 各種発電方法、技術について調べる活動である。 「単元2.風力発電機用の風車の製作」は、風 ─ 36 ─ (a)水平軸型 図3 風力発電機の概観 (b)垂直軸型 表3 指導計画(15単位時間) 生徒の設計活動 単元名および 小単元名 事前調査 <個人単位で実施> ・インターネットを利用して発 電方法の種類について個人で調 べる。 ・プレゼンテーションソフトを 利用して調べた内容をまとめ、 発表する。(4h) 1.電気エネルギー の利用と現状 (1)発 電 の 種 類、 方法の調査 (2)調 査 結 果 の 発 表 <班単位で実施> ・班で製作する風車を選択し、 インターネットを利用してその 原理・仕組みを調べ、まとめる。 (1h) 2.風力発電機用の 風車の製作 (1)調査 ・模型の製作や扇風機を使った 実験を行い、風力発電機用の風 車の基本設計を行う。(3h) (2)構想・設計 ・風力発電機用の風車の製作を 行う。(4h) (3)製作 ・デザインプロセスについて学 習し、風車改良の手順、ポイン トについて考える。(1h) (4)デ ザ イ ン プ ロ セスの学習 中間調査 ・風車の性能を発電量として評 価し、結果に基づいて改良する。 (2h) (5)性 能 評 価 と 改 良 事後調査
車の構想、製図から製作活動に至る一連のプロ セスである。13単位時間目には、デザインプロ セスの重要性や有用性について指導し、最後に、 製作した風車の性能を評価させ、改良の活動を 行わせた。 なお、13単位時間目は、デザインプロセスを 生徒に提示する場面である。この場面では、そ れまでの製作活動をふりかえりながら、作成し たデザインプロセス図(いずれか一方のみ)を 提示し、ものづくりにおいてどのような過程で 設計・製作を行うかについて指導することを本 時目標とした。 3.2 試行実践の方法 試行実践は東京都R中学校の2年生2学級、 89名(男子生徒39名、女子生徒40名)を対象と し、平成19年4月∼10月に学級毎にA群、B群 にわけて行った。両群は13時間目に提示するデ ザインプロセスとその指導場面が異なるのみで、 他の展開は基本的に同一とした。 13時間目については、A群に対しては、5段 階で構成されたAモデルを、B群に対しては、 Bモデルを提示し指導を行った。なお、両群に 説明等で大きな差が生じないように、デザイン プロセスの構成要素①∼⑤の説明においては、 配布した図を口頭で説明するだけにとどめた。 なお、生徒は1年次に木材を使ったものづく りの既習経験を有しており、ものづくりの過程 や順序については一定の理解を有している。 以上の実践の効果を明らかにするために、単 元開始前の事前調査、デザインプロセスの学習 時(13単位時間目)の中間調査、全単元終了後 (15単位時間目)の事後調査の3段階に分けて 質問紙による調査実施した。各調査は4件法 (よくできた:4、だいたいできた:3、あま りできなかった:2、全くできなかった:1) による質問と自由記述式の2種類の設問で構成 した。資料1に質問紙の一部を示す。 4.結果と考察 4.1 実践中の生徒の意欲と学習活動の評価 図4は、単元2.「風力発電機用の風車の製 作」における学習意欲について示したものであ る。デザインプロセスの構成要素毎に検討した 結果、いずれの段階でもA群の意欲が高いもの ─ 37 ─ 資料1 デザインプロセスの学習後の質問項目例(事後調査) ◆デザインのポイントに関する意識(※デザインプロセス学習直後) ・風車よりよく改良していくとき、あなたがとくに気をつけたいことを3つ挙げてください。 ◆デザインプロセスの各要素の実行 ・製作した風車の問題点をきちんと明らかにすることができた A B C D ・風車の製作や改良の方法や手段について、見通しを立てることができた A B C D ・風車の製作や改良に必要な情報を集めることができた A B C D ◆デザインプロセスの有用性 ・デザインプロセスの学習は、風力発電機用の風車の改良に役立った A B C D ・デザインプロセスの学習によって、自分の考えや行動で不十分な点に気づいた A B C D ・デザインプロセスの学習によって、どの段階でどんな作業を行うべきか気づいた A B C D ◆デザインプロセスで重要だと考える要素 ・製品を設計し、製作するプロセス(デザインプロセス)で大切なことは、どんなことだと思いますか。 あなたの考えを自由に書いてください。 ◆日常生活でデザインプロセスが使えそうな問題、状況、テーマ ・日常生活の中で、デザインプロセスの考え方が使えそうな問題、場面、テーマとしてあなたが考えら れるものを書いてください。
の、両群ともに高い学習意欲を維持して題材に 取り組んだことがわかる。また、構成要素毎の 意欲の差は少ないことがわかる。 また、表4は調査や予測など学習中の実行す るデザインプロセスの各要素で示された活動に 対する自己評価(デザインプロセスについての 学習前の段階で評価)を示している。計画段階 に対しては、B群に実行できたと回答した生徒 が多く、評価反省に対しては、A群に実行でき たと回答した生徒が多い。また、再設計、改良 については、B群の方が高い。いずれにしても、 両軍ともに概ね80%の生徒がそれぞれの活動を 肯定的に評価しており、試行実践は比較的良好 に進行したといえる。 なお授業者からは、学習中の生徒は班毎に協 力しつつ、最後まで風車の製作に取り組み、改 良の活動まで実施したこと、全体として意欲的 で、製作や話し合いに対する態度も良好であっ たことが報告された。 4.2 デザインプロセスの有用感 表5は、13単位時間に実施したデザインプロ セスに対する学習を終えた後に行った、「デザ ─ 38 ─ 表5 デザインプロセスに対する有効性・有用感 B群(被験者の割合) A群(被験者の割合) 質問項目 1 2 3 4 1 2 3 4 0.0 11.8 67.6 20.6 3.0 6.1 54.5 36.4 デザインプロセスの学習は、風力発電機用の風車の改良に役立った 0.0 20.6 55.9 23.5 0.0 21.2 39.4 39.4 デザインプロセスの学習によって、自分の考えや行動で不十分 な点に気づいた 2.9 14.7 67.6 14.7 3.0 9.1 48.5 39.4 デザインプロセスの学習によって、どの段階でどんな作業を行 うべきか気づいた 2.9 8.8 61.8 26.5 0.0 18.2 30.3 51.5 他の技術の授業(製作)でも、デザインプロセスの考え方を使 ってみたい 2.9 5.9 67.6 23.5 0.0 15.2 42.4 42.4 デザインプロセスの学習は、将来役立ちそうだと思う 注)4:そう思う、3:ややそう思う、2:あまり思わない、1:思わない 表4 デザインプロセスの各要素の実行 B群(被験者の割合) A群(被験者の割合) 質問項目 1 2 3 4 1 2 3 4 0.0 14.7 50.0 35.3 3.0 6.1 51.5 39.4 製作した風車の問題点をきちんと明らかにすることができた 0.0 11.8 67.6 20.6 6.1 15.2 54.5 24.2 風車の製作、改良の方法や手段について、見通しを立てること ができた 2.9 20.6 50.0 26.5 0.0 15.6 68.8 15.6 風車の製作や改良に必要な情報を集めることができた 0.0 20.6 47.1 32.4 12.1 21.2 36.4 30.3 風車を製作・改良するときいくつかの選択肢をあげて考えるこ とができた 2.9 29.4 55.9 11.8 6.1 24.2 63.6 6.1 模型製作や実験の結果をもとに、計画した風車を設計図にまと められた 2.9 14.7 52.9 29.4 3.0 12.1 63.6 21.2 自分の計画にしたがって、風車の改良に取り組むことができた 2.9 2.9 61.8 32.4 3.1 3.1 31.3 62.5 計画や実行についてふり返り、評価・反省することができた 0.0 11.8 50.0 38.2 0.0 24.2 39.4 36.4 製作した風車をさらによくするための工夫を3点以上あげるこ とができる 注)4:できた、3:ややできた、2:あまりできなかった、1:できなかった 図4 風力発電機用の風車の製作の各学習場面での生 徒の学習意欲
インプロセスの有効性・有用感」に関する調査 結果を示したものである。両群ともにデザイン プロセスに対する有用感は高く、両群ともに 90%近くの生徒が、それぞれの質問項目に対し て肯定的(そう思う、ややそう思う)な回答を 行った。 両群を比較すると、A群の方がそれぞれの質 問項目について「そう思う」と回答する生徒が 多く、B群では「ややそう思う」と回答した生 徒が多い。とくに、「他の技術の授業デザイン プロセスの考え方を使ってみたい」の項目では、 A群では50%以上の生徒が「そう思う」と回答 しており、B群の26.5%を大きく上回った。一 方B群では、「他の技術の授業でデザインプロ セスの考え方を使ってみたい」、「デザインプロ セスの学習は将来役立ちそうだと思う」の項目 で、「そう思う」、「ややそう思う」と回答した 生徒の合計がA群を上回った。簡潔な表現でま とめられたAモデルの場合により高い有用感を 生徒が持ったことは、明瞭なデザインプロセス の提示が必要であることを示唆している。一方、 プロセスの他分野への転用や将来の活用につい ては、詳細なB群の生徒がより多くが肯定的に 評価したことから、デザインプロセスの意味や 役割を丁寧に説明することで、より高い効果を もたらすものと考えられる。 4.3 学習活動に対する生徒の意識の変化 学習の事前事後に、「よりよく設計・製作す るためのポイントはどんなことですか?」とい う自由記述による質問を行い、班ごとに話し合 わせた。その結果(図5)、学習前には多くの 生徒が、「話し合うこと」、「事前によく調べて おくこと」、「みんなで協力する」、「疑問があっ たら調べる」、「向上心」などの回答がみられた。 一方学習後は、A群、B群ともにデザインプロ セスが意識された回答が得られた。とくにB群 の回答では、「実験を重ねて改良する」、「次の 改良点を探すことをやめない」など、完成させ ることまでを目標とするのではなく、改善し、 よりよくするという、一般的な技術的営みに通 ずる認識を持つ生徒がみられ、ループモデルを 学習した重要な成果を見出すことができる。 次に図6は、全ての学習が終了した後、「デ ザインプロセスにおいて大切だと思うのはどん なことですか」という自由記述の質問に対する 回答を、今回提示した2種類のデザインプロセ スで共通な5つの構成要素をもとに分類した結 果である。②計画は両群とも最も高く、製作活 動に対しては設計段階の必要性を認めることを ─ 39 ─ 図5 デザインプロセス学習前後における生徒の回答例(デザインプロセスで大切だと思うこと)
示した既往の研究と同様の傾向であった13)。ま た、A群は④評価・反省に、B群は⑤再設計/ 次の問題への取り組みが重要だと答える割合が 高く、B群ではループモデルの学習の特徴が表 れたものといえる。 また、デザインプロセスの活用可能な問題や 場面について、「日常生活の中で、デザインプ ロセスの考え方が使えそうな問題、場面、テー マとして、あなたが考えられるものを書いてく ださい。」という自由記述の質問を行った。そ の結果、日常のものづくり場面だけでなく、学 習活動や日常の意思決定にいたる幅広い動が回 答として挙げられた(表6)。これらの回答か ら、生徒の多くはデザインプロセスがものづく りなど技術的な場面にのみ活用可能なものでは なく、さまざまな問題の解決場面への応用が可 能な思考ツールとして有用であると認識したこ と推察される。このような認識は、技術学習の 有用感や意義役割を理解させるとともに、技術 的な活動や社会における様々な意思決定の方法 について一定の経験を与え、ひいては現代社会 に広がる複雑な問題の解決能力を高めうるもの であり、今後指導過程や学習モデルについての さらなる検討が必要と考えられる。 5.まとめ 本研究では、技術教育においてデザインプロ セスの学習が創造性、問題解決力の育成に対し てどのように貢献するかについて明らかにする ために、デザインプロセスの理解を促すことを 目標とした指導課程を計画し、実践を通じて検 討を試みた。その結果、以下のことを明らかに ─ 40 ─ 表6 デザインプロセスの活用場面についての回答 活用場面 生徒の回答 ものづくり 料理 何かをつくる時 ものを修理する時 学習活動 勉強 数学の問題を解く ディベート レポート・作文 調べ学習 国語の主題をみつける時 自分の考えを主張する時 話し合い 日常の意思決定 清掃 靴を買う 部屋の模様替え 旅行 日常の全てのことに使っている 生活の見直し その他 将来を決める時 環境問題 ゴミのリサイクル 図6 デザインプロセスで大切だと思うこと
した。 1)学習後、生徒の約90%がデザインプロセ スに対して有用感を感じ、他の場面に利用して みたいと考えた。 2)2種類の異なるデザインプロセスモデル を2つの生徒群に提示した結果、簡潔で明瞭な モデルを提示した群がより有用感を持つことが わかった。 3)デザインプロセスとして閉鎖環モデルを 提示した場合、活動の評価よりも改善に対する 意識がより強く表れた。 4)デザインループについて、多くの生徒は、 単に技術の学習だけにとどまらず、他教科や日 常の場面において適用可能であると認識した。 以上の結果をもとに、今後は生徒が活用しや すいデザインプロセスモデルの構築、指導方法、 指導計画の検討、問題解決力育成の効果の検証 が必要である。 参考文献 1)間田泰弘:新技術科教育総論「目的・目標」 編1.技術科教育の目的と今日的課題,日本 産業技術教育学会,pp2−9,2009 2)中島康博,宮川秀俊:技術科教育における創 造性の育成に関する基礎的研究(1)─表と 計算の学習についての一考察─,日本産業技 術 教 育 学 会 誌 第36巻 第 3 号,pp.185− 191,1994 3)魚住明生,佐伯謙介:技術科教育における問 題解決能力を育成する教材に関する研究,教 材学研究18巻,p77−84,2007 4)岳野公人:ものづくり学習における計画の作 成に関する授業実践,日本産業技術教育学会 誌第47巻第1号,p25−30,2005 5)新村出:広辞苑第五版,岩波書店,1998 6)富山哲夫:設計の理論<設計系Ⅱ>(岩波講 座 現代工学の基礎),岩波書店,2002 7)G. ポール,W. バイツ共著,ケン・ワラス編, 設計工学研究グループ訳:工学設計 体系的ア プローチ,株式会社培風館出版,1977 8)磯部征尊,山崎貞登:イングランドOCR試験 局 の 中 等 教 育 修 了 一 般 資 格 試 験“Design & Technology”の評価規準とポートフォリオ, 日本産業技術教育学会誌第45巻第2号,p1− 12,2003 9)山崎貞登:新技術科教育総論「比較教育」編 2.イギリス,日本産業技術教育学会,pp180 −185,2009
10)Roberts, P.: “The Place of Design in Technology Education.” In D. Layton (ed.), Innovations in Science and Technology Education, Vol.5. Paris: United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization (UNESCO), 1994 11)Peter Sellwood:Technology Education in the
Classroom: Understanding the Designed World, 1995 12)東 京 書 籍:新 し い 技 術・家 庭 科 技 術 分 野, 2004 13)谷田新彦,上田邦夫:ものづくり学習に対す る中学生の意識構造の分析,日本教科教育学 会誌第23巻第2号,p29−36,2000 14)渡辺健介:世界一やさしい問題解決の授業, ダイヤモンド社,2007 (2009年9月30日提出) (2009年10月16日受理) ─ 41 ─
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A practical study on the significance of Design Process
Learning in Technology education
Shigehiro A
SADA, Youichi S
ATO, Norio S
HIBATA, Toshiro D
OIKeywords:Design Process, problem-solving, Technology Education
We planned and run a technology curriculum that aimed for determining significance of design process learning in technology education. For this study, we developed two types of design process model and showed student groups them in classroom for understanding of the design process and tried to clarify how it contributed for creativity or problem solving ability through doing practice in junior high school.
As a result, we clarified the following.
1) When we provided with a meaning and a model of design process more accepted by students in the classroom, about 90% of the student felt a useful feeling for a design process and almost students recognized they could apply it not only in the other subject but an everyday scene.
2) Teaching a simple and clear design process model made them thought to use it, easily. On the other hand, students who had learned a closed-loop model which was designed by us, had understanding that improvement of a result in technological activity was more important than evaluation of that.