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Title

戦前期主要農産物生産費調査の原資料の検討

Author(s)

三重, 遷一; 仙田, 徹志

Citation

Working Paper Series (2018), 7: 1-81

Issue Date

2018-07

URL

http://hdl.handle.net/2433/233866

Right

Copyright (C) 2014 Academic Center for Computing and

Media Studies, Agricultural Economics and Information

Laboratory, Kyoto University. All Rights Reserved

Type

Research Paper

Textversion

author

(2)

S

TATISTICAL

D

IGITAL

A

RCHIVE OF

A

GRICULTURE

,

F

ORESTRY AND

F

ISHERIES

WORKING PAPER SERIES

学術情報メディアセンター

(3)

Working Paper Series No.7 戦前期主要農産物生産費調査の原資料の検討 三重遷一* 仙田徹志† * 大阪経済法科大学 † 京都大学学術情報メディアセンター 2018年7月

Academic Center for Computing and Media Studies, Agricultural Economics and Information Laboratory

本Working Paperは、京都大学寄附講座 農林水産統計デジタルアーカイ

ブ講座のプロジェクト研究として実施された研究成果を公表するための ものである。

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1

戦前期主要農産物生産費調査の原資料の検討

1.はじめに 戦前期に実施された「農家経済調査」原票の相当数が京都大学に移管されているの は、経済史の研究者の中でよく知られているが、京都大学農学部附属 旧農業簿記研究 施設(以下、旧簿記研と略す)には、「農家経済調査」のほかに、「主要農産物生産費 調査」という、戦前期に実施された調査原票も保管されている。「主要農産物生産費調 査」の調査結果は、全国及び府県別での統計は公表されているが、調査対象に選別さ れた個別農家の個票は、旧簿記研を除けば、現存していることが確認できていない(注 1)。そのため、これら農家の個票は、戦時経済体制下の多くの作目の投入・産出の実 態を明らかにするうえで、非常に貴重な資料といえる。 そこで、本稿では、旧簿記研に所蔵されている戦前期の「主要農産物生産費調査」 の個票の所蔵状況について、明らかにすることを課題とする。 本稿の構成は以下のとおりである。まず第2節では、対象資料である「主要農産物 生産費調査」についての概要を説明する。続いて第3節では、原資料の構成と調査内 容について述べる。第4節では、資料調査結果と概要で把握された調査戸数とを比較 し、旧簿記研所蔵の資料の残存率と特徴を述べる。最後に、第5節では、調査結果の まとめと今後の課題について述べる。 2.主要農産物生産費調査の概要 1)戦時期における食糧増産政策の開始 後述するように、農産物の生産費調査は、大正期から行われていた。だが、調査方 式の統一と調査作物・調査戸数の大幅な増加が図られた、本稿の対象資料の「主要農 産物生産費調査」が戦時期に行われた要因としては、戦時期の食糧増産政策との関係 が挙げられる。野田(2013)によれば、「昭和戦前期の日本では「資源」という言葉 が急浮上し、あらゆるものが「資源化(=資源開発)」の対象として眼差されることに なった」(注 2)。日本での戦時農業資源開発においては、本格的に戦時食糧増産に取 り組んだのは、昭和 14 年の西日本と朝鮮半島を襲った大干ばつ以降のことであった (注 3)。戦時体制に突入した昭和 12年段階ではまだ農産物過剰感が強かったため、 同期間の諸政策は、燃料国策遂行のためのエタノール原料用作物と、外貨獲得のため の輸出農産物の増産奨励が中心であった。しかし、労働力をはじめとする生産諸要素 の逼迫と物資動員計画の改定を受け、昭和 13 年には臨時農村対策部が設置され、翌 昭和 14 年には重要農林水産物増産助成規則が公布された。本規則に基づいて、諸品 目の増産と労力調整対策を内容とする重要農林水産物資増産計画(昭和 16 年以降は 「生産計画」)が樹立されることとなった。昭和16年には、より抜本的な増産対策の ために農地開発法が制定され、同法および国家総動員法による諸法令に基づき、主要 食糧等自給強化十カ年計画が樹立された。昭和 17 年には、朝鮮半島の干ばつと麦不

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2 足のため需給が逼迫したことや、戦況の悪化に伴って輸移入への依存が困難となり、 食糧事情が一気に緊張したことから、昭和17年から19年の三次にわたる食糧増産応 急対策が取られることになった(注4)。 重要農林水産物増産(生産)計画の増産対象と増産理由の変遷を見ると、昭和 14 年の計画で挙げられた増産対象作物のうち農産物は、米穀、小麦、大麦、甘藷、馬鈴 薯、麻類(苧麻、大麻、亜麻)がある。米穀は主要食糧として、麦類では小麦が輸出 品であったことから位置づけが高く、甘藷・馬鈴薯は、もっぱら酒精原料であった。 また、繊維資源としての麻類の増産に力が入れられていた。昭和 17 年の計画では、 農産物に新たに大豆、玉蜀黍、黄麻が加わった。また、大麦、裸麦にも新たに増産計 画が立てられた。大豆や大麦は、食糧事情の緊迫への対応であり、玉蜀黍は食糧とと もに不足を極める濃厚飼料として、また黄麻は繊維資源の国内確保策として位置づけ られた。昭和19年の計画では、さらに農産物の増産作物が増え、必需野菜(18品目) (注 5)とこんにゃく芋、除虫菊、菜種、はっか、桑皮、三椏、楮が加えられた。菜 種は脂料資源として、はっか、除虫菊は、医薬および農薬原料として、桑皮は繊維資 源として、楮、三椏は軍票・紙幣等の軍需および国家的需要に対応した和紙原料とし て加えられた。こんにゃく芋、はっかは、戦争末期の資源枯渇のもとで、新たな資源 的価値を見いだされ、不足資源の代替物として動員された(注6)。 以下で述べる主要農産物生産費調査の調査品目には、上記で挙げた増産作物のうち、 桑皮を除けば、全てが含まれており、調査品目の選別と調査戸数の変化には、「農産物 の戦略的種別化」(注7)が要因として働いていたと考えられる。 2)主要農産物生産費調査の沿革 主要農産物生産費調査は、昭和15年から昭和23年にかけて実施された生産費調査 であり、米以外の麦類、甘藷・馬鈴薯、野菜、果実、工芸作物が対象となる。かなり 細かい品目単位で調査がなされており、その品目数は 60 以上に及ぶ。以下では、石 橋(1960)を参考に、麦類、甘藷・馬鈴薯、野菜・果実・工芸作物それぞれの沿革を 述べる(注8)。 麦類の生産費調査は、帝国農会の大正 11 年に開始した水田裏作麦についての調査 が最初であり、農林省では昭和7年に小麦増殖奨励5か年計画事業の一環として府県 農務課を通じて麦類生産費調査が初めて実施された。その後、帝国農会の麦類の生産 費調査は、昭和 10 年に各種農作物についての収支並びに生産費調査を開始するにあ たり、その一環として、小麦・大麦・裸麦にわたって再び生産費調査が開始されたが、 その調査道府県や調査戸数はわずかであった(注9)。昭和14年に至り、帝国農会で は、農産物に対する価格統制の問題から「重要農産物生産費調査」の一環として、麦 類(大麦、小麦、裸麦)の生産費調査が再開された。そして、昭和 15 年に農林省総 務局委託の「主要農産物生産費調査」が実施されるに至り、当初はその中に含まれて いなかった麦類(大麦、小麦、裸麦)の生産費調査も昭和 16 年から「主要農産物生 産費調査」に吸収されることとなった。しかしその後、昭和 17 年には米穀統制法に 代わって食糧管理法が施行され、麦類は政府の管理下におかれることとなった(注10)。 その結果、麦価公定の基礎資料として、農林省食糧管理局による麦類(大麦、裸麦、

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3 小麦、燕麦)の生産費調査が実施されることとなったが、帝国農会では昭和 17 年か らも独自の立場で、大麦、裸麦、小麦の調査を継続実施した(注11)。昭和23年に至 り、食糧管理局の麦類生産費調査が農林省統計調査局(現、農林水産省大臣官房統計 部)に移管され、併せて帝国農会(昭和 18 年以降は農業会)の調査も各種農産物の 生産費調査とともに統計調査局に移管された(注12)。 次に、甘藷・馬鈴薯の生産費調査について述べる。帝国農会による調査は、昭和10 年から各道府県農会と協力して各種の農作物についての収支経済ならびに生産費調査 のために開始された。しかし、この調査は、調査戸数や調査農家の選定などは地方に 一任されていたので、調査戸数は少数にとどまっていた。しかし、昭和 12 年に、甘 藷・馬鈴薯がアルコール原料として配給統制と価格の公定が実施され、調査戸数が増 大した。さらに、昭和 14 年の帝国農会による「重要農産物生産費調査」の発足にあ たり、重点的作物としてその調査戸数の増加や、調査方法等にわたっての整備が行わ れた。昭和15年には、「主要農産物生産費調査」が農林省委嘱のもとで帝国農会によ って開始され、甘藷・馬鈴薯も昭和17年から生産費調査に合流して昭和23年まで実 施されることになった。他方、農林省による調査は、昭和 12 年から開始されるが、 昭和 17年まで続けられた後に「主要農産物生産費調査」の中に吸収された(注13)。 その後、昭和 23 年に至り、甘藷・馬鈴薯の生産費調査が農林省統計調査局に移管さ れるのは、麦類と同じである。 最後に、野菜、果実、工芸作物の生産費調査の沿革について述べる。農林省統計情 報部(1975)によれば、「米麦及び繭以外の農産物の生産費調査は、大正年代から一 貫した全国的な調査は行われず、部分的に地方農会・府県庁等で、その地方の特産物 についての収支経済的な調査が行われていたにすぎず」とある(注 14)。しかし、農 業恐慌への対応策として、昭和8年に至り、帝国農会の指導の下に全国道府県農会に おいて、経営改善資料としての「主要農産物経済調査」(注 15)が開始され、主要農 作物の収支経済及び生産費調査を実施することになった。しかし、調査戸数や調査品 目の選定は、各道府県農会に一任されており、組織的な調査とはなっていなかった。 その後、昭和 14 年には戦時経済の進行に伴い、農産物に対する価格統制の問題が台 頭し始めると、物価上昇を抑制することを目的に「価格統制令」が公布された。これ に対応して、帝国農会では、公定価格設定のための基礎資料を得るために、「重要農産 物生産費調査」を実施することになった(注 16)。翌15年に至り、「重要農産物生産 費調査」は、農林省委託の「主要農産物生産費調査」に吸収され、昭和 23 年まで実 施され、その後に農林省統計調査局に移管されるのは、麦類や甘藷・馬鈴薯と同様で ある。 3)主要農産物生産費調査の標本数とその選定方法 上述のような経緯で設計、拡充されてきた主要農産物生産費調査であるが、その過 程は標本数の推移からもうかがえる。主要農産物生産費調査の品目別標本数を示した ものが表1である。なお、表1には、前述の沿革で述べたように、大麦、裸麦、小麦、 甘藷、馬鈴薯については帝国農会独自の調査による調査戸数を含んでおり、燕麦につ いては昭和 17 年以降では農林省食糧管理局による調査戸数を含んでいることに留意

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4 する必要がある。 これをみると、全体の調査農家戸数は、調査が開始された昭和 15 年の 4,848 戸か ら16年にかけては5,223戸へ約 1.1倍に増加しているが、戦時下において昭和17年 からは減少していき、昭和 20 年には 1,080 戸までに著しく減少している。終戦後の 昭和 21 年に調査戸数は、再び 1,560 戸まで増加するが、農林省統計調査局に移管さ れる昭和23年には1,055戸となっていた。 次に品目数をみると、昭和 15 年の開始当時の調査品目は 62 品目(注 17)あり、 これに昭和16年には「みつば」、「ほうれん草」、「筍」、「楮」、「綿」が加わり、67 品 目まで増加している。しかし、昭和 17 年からは戦時下のために、昭和 18 年を除き、 品目数は減少し、昭和20年には50品目となっている。昭和21年には 55品目まで増 加するが、最終的に昭和23年には 37品目まで減少している。 種類別に各品目の特徴をみると、米と並んで政府の管理下におかれた麦類や甘藷・ 馬鈴薯は、全体に占める調査戸数が多く、どの年次でみても大きな比率を占めている。 穀菽類では、大豆の調査戸数の比率がすべての調査年を通じて高いことと、「ひえ」が 昭和 17年から調査に加えられ、調査戸数は 10 戸以下であるが、昭和22年まで減少 していないことが挙げられる。野菜類では、大根の調査戸数がすべての調査年を通じ て全体に占める比率が高い一方で、「西瓜」、「越瓜」、「甜瓜」、「みつば」、「蓮根」、「小 松菜」が昭和19年以降は調査から省かれている。果樹類においては、昭和17年から 「支那梨」が、昭和 20 年から「西洋梨」と「櫻桃」と「梅」が調査品目から省かれ ている。特用作物では、昭和20年にはほとんどの品目が調査戸数を減らすなか、「菜 種」の調査戸数が大きく増加している。また、昭和19年から「糸瓜」が、昭和21年 から「楮」と「綿」が省かれている一方で、「茶」が昭和 21 年に、「たばこ」が昭和 22 年に新たに品目に追加されている。そして、「れんげ種子」は、昭和 17 年と昭和 23年を除いて、ほとんど調査戸数に変動がないことが挙げられる。 次に、表1で示した標本の選定方法についてみていく。農産物の生産費に限ったこ とではないが、調査客体である農家が代表性を持つのか、という点は、調査結果を見 る上で重要な問題であり、調査客体が存在する村(調査村)の情報も大事である。委 託を受けたと思われる帝国農会の資料である帝国農会調査部(年度不詳)『農林省委嘱 主要農産物生産費調査解説』には、「調査道府縣槪況表」と「調査農家槪況表」など、 標本選定の資料が掲載されている。それを示したのが表2-1、表2-2、表3-1、 および表3-2である。 選定の要領は、まず道府県における生産地より調査町村としての条件を備えたもの を選定した後、調査町村内において調査農家をそれぞれの条件によって選定しており、 この選定は、当時としては進んだ基準を設けていたと指摘されている(注 18)。調査 においては、調査町村と調査農家はできる限り変更しないが、やむを得ない場合には、 前調査町村と同一条件を備えた町村を選定し、同様に調査農家の一部を変更する場合 にも変更すべき前農家とできる限り同一条件を備えた農家であり、かつ記帳に適した 者を選定することとしている(注 19)。以下、帝国農会調査部(年度不詳)より、調 査町村及び調査農家の選定要領をみていくことにする(注20)。

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5 (1)調査町村選定及び調査道府縣槪況表(表2-1、表2-2) 調査品目を新たに調査する場合、調査品目の主要産地において最も中庸な条件を具 備した町村をまず選定する。そのために、道府県で調査品目の概況を調査し、次の条 件を考慮に入れて調査町村を決定する。 ① 商品化率 ② 出廻状況 ③ 実納小作料 ④ 地方主要集荷市場に対する距離 ⑤ 反当収量 ⑥ 町村における農家経営規模の大小及び之が属する農家戸数で全経営と調査品 目経営との間に著しい相違がないこと、すなわち、町村の規模別にみた農家 構造、そして町村内の総農家数と調査対象品目を生産する農家数との間で大 きな差が無いこと 以上の点において、主要産地と代表性を持つものとして選定される調査町村とは一 致すべきものとされていることから、選定された町村は、有意抽出ではあるが、一定 の代表性を持っていたものと考えられる。 (2)調査農家槪況表(表3-1、表3-2) 本調査では、農家経営及び調査品目の栽培上の状況によって、調査農家を上・中・ 下の3つの経営階層に区分し、調査町村における階層別経営面積または作付面積の割 合を以て、経営階層ごとに調査農家5戸を割り当てることとしている。ただし、調査 品目が普通作物の場合は、農家経営面積(田畑各園地)の大小により、これを上記三 階層に分類し、各層において占有する経営面積の割合に従って調査農家を配当してい る。また、各階層においては自小作者を除き、自作者対小作者割合(7割以上の自作 または小作をなすもの)を以て、自小作者別の割当を行っている。 以上のうち、階層別面積が全経営と調査品目から見て、二者並行的でない作物と果 樹等においては、調査農家の割当を調査品目のみについて考慮している。この場合は、 経営階層の分類は、調査品目と地方の実情に即した基準に依って階層別調査品目と作 付面積の割合から5戸を按分する。そのため、農家経営欄と調査品目欄は、調査作物 によって軽重を異にしており、一方は他方の参考的記載となっている。 また、階層別按分において、戸数に端数が生じた場合には、四捨五入方法によって 5戸を決定している。 3.主要農産物生産費調査原資料の構成と調査内容 1)主要農産物生産費調査原資料の構成 ここでは、主要農産物生産費調査の原資料の構成と調査内容について述べる。帝国 農会調査部(年度不詳)によれば、主要農産物生産費調査は、「原簿」または「生産費 調査簿」(以下、両者をあわせて原簿と表記する)とそれをとりまとめた算出簿の二種 類の調査資料から構成されている(注 21)。それぞれの資料は、以下の構成になって

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6 いる。 (1)原簿 調査作物の品種別竝に年齢別作付面積及生產數量 (一)家族及年雇表 (二)農家資產表 (三)農家總收入表 (四)調査作物竝に前作物、前々作物及間作物の作付段別竝に生產價額表 (五)調査作物に使用せられる土地表 (六)調査作物に使用せられる建物表 (七)調査作物に使用せられる大農具表 (八)調査作物の生產に用ひられる成園表 (九)調査作物に關する現金出納帳 [附]租稅及公課表 (十)調査作物に關する作業及現物日記帳 [附](一)作業分類表 [附](二)農業作業別協定勞賃表 (2)算出簿 (一)調査作物使用部分資本算出表 (二)農家總収入竝ニ調査作物生產價額槪算表 (三)所用勞働量集計表 (四)所用勞賃額算出表 (五)種目別生產費用計算表 (六)生產費用種目別一覽表 (七)調査作物主生產物生產數量竝ニ副產物生產價額算出表 (八)資本利子未算入段當及主生產物單位當庭先生產費用算出表 (九)資本利子算入段當及主生產物單位當庭先生產費用算出表 (十)資本利子算入市場渡生產費用算出表 調査作物ノ品種別年齢別作付面積及生產數量 調查成績ノ中央集査上必要ナル算出者ノ所見 以上の原簿と算出簿の具体的な内容については、別添1と別添2にまとめてある。 旧簿記研には、原簿と算出簿の双方が保管されていた。原簿に関しては、調査農家の 当該品目の投入産出にかかわる内容以外にも、農家の属性を含め、農業経営全般にか かわる内容も一部記録されているところに特徴がある。帝国農会調査部(1943)によ れば、主要農産物生産費調査は、調査のみならず、調査客体の農業経営改善の資料と しても活用されたとの記載もある(注22)。 2)主要農産物生産費調査の調査項目

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7 (1)主要農産物生産費調査の調査項目の特徴 主要農産物生産費調査の主な特徴は、費目の構成とその評価方法に示されるという 指摘があり、従来の農林省方式あるいは帝国農会方式との相違点として、以下の点が 挙げられている(注23)。 ① 新たに「資本利子」を費目として計上し、従来の生産費調査では土地資本利子 のみを計上していたのに対して、さらに固定資本・流動資本の利子を計上する こととしたこと。 ② 「租税公課」に所得税をも含む一切を参入することで、生産費の計算範囲が従 来に比べて、著しく拡大されたこと。 ③ 果樹等の永年作物(固定費用)の費目として「成園費」を設けて、果樹等の育 成原価(果樹として成木になるまでに要した費用の合計)による新調価を基礎 価額として、耐用年数による減価償却費を算定することにしたこと。 ④ 費目分類に新しい方式を取り入れ、従来「諸材料費」に含まれていた「藥剤費」 及び「包装荷造材料費」を分離・独立させ、新たに「共同負擔費」を設けたこ とと、費目別にその内訳を購入・支払、自給、償却に分けて費用内容を明らか にしたこと。また、生産者自身の所有に属する「家族勞働費」を「勞賃」から 分離し、これと「資本利子」を合わせて「内給生産要素費用」として取り扱う こととしたこと。 (2)算出簿(五)種目別生産費用計算表における費目の構成と評価方法 ここでは、「算出簿」の「(五)種目別生産費用計算表」に挙げられている各費目に ついて、生産費用算出のための費目の構成と評価方法について述べる(注 24)。具体 的には、以下の(イ)種苗費から(タ)販賣費のとおりとなる。 (イ) 種苗費 調査作物の種子代や育成する苗の購入費が対象になり、購入種苗代はその価額、 自給種苗代は市価に準じて評価された価額となる。ただし、選種その他に必要な 諸材料代は、(ニ)「諸材料費」に含まれる。 (ロ) 肥料費 調査作物の栽培に消費した肥料代である。自給肥料の場合は、その評価額が対象 となる。しかし実際には、前作物に施された肥料が調査作物の肥料になる場合や、 反対に調査作物に施された肥料の相当部分が残留して後作物の肥料になる場合が あるため、調査作物に直接施された肥料だけをその対象としている。間作物の場 合は、その主目的が調査作物の施肥であるかどうかによって、調査作物の肥料費 として含むかどうかを判断している。 (ハ) 藥剤費 調査作物の病虫害駆除に用いられた農用薬剤代を指す。 (ニ) 諸材料費 調査作物に使用した敷藁、苗床敷込材料、選種材料、動力油及び機械油等の一切

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8 の諸材料を含み、調査作物に使用した電力代、生産検査手数料もこの諸材料費中 に含まれる。ただし、包装荷造材料は、昭和17年産以降からは、新たな費目「包 装荷造材料費」として集計されている。 (ホ) 共同負擔費 調査作物に関する共同水守り、共同乾燥場借入、共同病虫害駆除等、数戸または 部落の共同で行う行事や事業の共同費用分担額である。ただし、一種の共同負担 額費であるが、調査作物負担の出役労働は、調査作物の「其他勞働」として取り 扱われ、(ル)や(カ)の「勞働費」の中に含まれている。 (ヘ) 小農具費 調査においては、新調価が拾圓に満たない農具を「小農具」として、その年度の 調査作物に必要とする小農具の購入代金及び修繕代を「小農具費」としている。 (ト) 大農具費 「大農具費」は、調査作物に使用される大農具の減価償却費、経常的維持修繕費、 及び借入農具の賃借料のうち調査作物の生産費が負担すべき金額となっている。 調査作物への「大農具費」の負担率の算出は、調査作物における各大農具使用日 数を、それぞれの大農具費の総使用日数で除すことで行う。 (チ) 建物費 「大農具費」と同様の記入方法となっている。しかし、「建物費」における調査作 物の建物費負担率は、使用日数を基準として決定することができないことが「大 農具費」と異なる。そのため、調査作物への使用とその他の使用との大体の使用 割合を調査農家に評定させて建物費負担率を決定している。 (リ) 成園費 果樹作及び木本性特用作物の調査だけにある費目である。「大農具費」、「建物費」 と同様の記入方法となっている。ただし、調査果樹園が小作されている場合は、 果樹園小作料を、土地の小作料と果樹の小作料とに分解し、果樹の見積小作料だ けを記入し、土地の見積小作料は、後述の「(ヲ)借入地用役費」に算入する。 (ヌ) 畜役費 牛または馬の使役日数や価額を、他人所有の牛馬を借用した場合と、自家飼養の 牛馬を使役した場合とに分けて記入する。 (ル) 雇傭勞働費 男女各別の労働日数と労働費を計算して記入する。 (ヲ) 借入地用役費(小作料) 調査作物作付地が借入地である場合に集計されるものであり、「数量」欄には、小 作地で栽培される調査作物の「作付反別」の数値が用いられ、「金額」欄には、小 作料支払額を原簿から拾い出して記入される。また、未だ納入していなくても、 その年度に調査作物を栽培している借入地のある時には、その未納小作料も計上 することとなっている。さらに、物納小作料の場合には、その数量と時価を「單 價」として乗算し、金額を計上する。 (ワ) 租税公課 調査作物に関係あるものだけが算出簿に記入される。調査作物負担率の算定方法

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9 は、別に作成されている「算出便覧」に示されている。 (カ) 家族勞働費 男女各別の労働日数と調査地方における協定労賃から算出する。ただし、労働日 数は、各人別の実際労働日数を労働能力(男女一人前普通の能力のあるものを1.0 とする)により換算している(注25)。 (ヨ) 資本利子 資本利子は、調査作物生産に用いられた土地資本、固定資本及び流動資本に関し て、以下のように算出される(注26)。 ① 土地資本利子:土地価額を調査作物とその前作物との収益により按分した金額 に利率4分を乗じて算出する。 ② 固定資本利子:「建物」、「大農具」、「成園」の年度始価額を調査作物と他の用 途との使用割合により按分した金額に利率4分を乗じて算出する。 ③ 流動資本利子:調査作物生産費用(注 27)の中、購入支払額と自給額の合計 の半額に対して、その作付から収穫、販売されるまでの期間の利子を見積もっ て利率4分を乗じて算出する。 (タ) 販賣費 原簿より出荷運賃、レッテルの購入支出等を拾出し、集計する。なお、包装の費 用は「販賣費」として取り扱わずに、「諸材料費」及び「勞働費」に計上している。 (3)原簿と算出簿の対応関係 次に、原簿と算出簿の対応関係について、農林省統計情報部(1975)をもとに述べ る。原簿と算出簿の項目ごとの対応関係を示したのが図1である。以下、原簿の各項 目をもとにみていくことにする。  調査作物の品種別竝に年齢別作付面積及生產數量 原簿には調査作物の品種別並びに年齢別の調査内容が記入されており、算出簿の「調 査作物ノ品種別年齢別作付面積及生產數量」に転記されている。ただし、原簿におい ては、調査を行わない品種についても、「調査外」としながらも、参考のために記入す ることが求められている。  (一)家族及年雇表 原簿「(一)家族及年雇表」では、まず、経営主との続柄・氏名・年齢と一人前の 働きがあるものを 1.0とした時の労働能力について記入されている。ここで労働能力 がない者、労働能力が不相応に低い者を除いた者が調査の対象となっている。そして、 算出簿「(三)所用勞働量集計表」に作業ごとの作業日数が集計されている。  (二)農家資產表 原簿「(二)農家資產表」では、調査農家が所有する土地(反別)、建物の評価額と 賃貸価額が記入されている。これらの資産のうち、後述する原簿「(五)調査作物に使 用せられる土地表」や「(六)調査作物に使用せられる建物表」に、調査作物に使用す

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10 る部分の土地、建物が記載されている。  (三)農家總收入 原簿「(三)農家總收入表」では、①調査作物を含む作物収入の種目や作付反および 数量、②作物以外(養蚕、畜産、加工)の農業収入、③小作料収入、④その他農外収 入、の記入項目がある。これらの金額が算出簿の「(二)農家總收入竝ニ調査作物生產 價額槪算表」に転記され、最後に①から調査作物部分の金額が転記されている。  (四)調査作物竝に前作物、前々作物及間作物の作付段別竝に生產價額表 原簿「(四)調査作物竝に前作物、前々作物及間作物の作付段別竝に生產價額表」で は、調査作物の作付調査地を自作・小作で分類し、それぞれ田・畑・その他の中で、 作付調査地では前作・前々作や間作物としてどのような種目を作付したかを反別およ び生産数量、生産価額で記入している。このうち、「小作」欄の調査作物の「作付段別」 が、算出簿「(五)種目別生產費用計算表」の費目「(ヲ)借入地用役費(小作料)」の 数量に記入される。  (五)調査作物に使用せられる土地表 原簿「(五)調査作物に使用せられる土地表」では、調査作物を作付している調査地 の使用部分の割合や、調査作物に使用されている建物の敷地、作業場などをそれぞれ 所有地(自作)と借入地(小作)に分類して記入するようになっている。所有地の場 合には、その面積、価額、賃貸価額、調査作物における使用割合が記入されており、 借入地の場合には面積、小作料(賃借料)、調査作物の使用割合が記入されている。 この調査項目には参考として、調査作物以外のすべての借入地の面積、小作料(賃 借料)、小作権価額が記入されている。また、備考欄には小作料の支払時期と物納の品 目別数量とその評価額を記入することが求められている。 原簿に記入された所有地の反別と価額は、算出簿「(一)調査作物使用部分資本算 出表」の「土地資本」に転記され、「調査作物の使用割合」で算出した土地の部分価額 は、算出簿「(五)種目別生產費用計算表」の費目「(ヨ)資本利子」に転記されてい る。  (六)調査作物に使用せられる建物表 原簿「(六)調査作物に使用せられる建物表」は、上記(五)と同じく算出簿「(一) 調査作物使用部分資本算出表」の「固定資本」に転記され、そこから算出された年償 却額が、算出簿「(五)種目別生產費用計算表」の費目「(チ)建物費」に転記されて いる。  (七)調査作物に使用せられる大農具表 原簿「(七)調査作物に使用せられる大農具表」では、新調価が拾圓以上のものを大 農具とみなし、経過年数と将来の耐用年数、調査作物における使用割合が記入されて いる。これらの数値から、算出簿「(一)調査作物使用部分資本算出表」の「固定資本」

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11 に転記され、算出された各種大農具の年償却額が、算出簿「(五)種目別生產費用計算 表」の費目「(ト)大農具費」に記入されている。  (八)調査作物の生產に用ひられる成園表 原簿「(八)調査作物の生產に用ひられる成園表」は、上記「(六)調査作物に使用 せられる建物表」や「(七)調査作物に使用せられる大農具表」と同様に、新調価と経 過年数と将来の耐用年数が記入されている。ここでは、果樹の育成原価を新調価とし て扱っている。これらの数値は算出簿「(一)調査作物使用部分資本算出表」に転記さ れ、算出された年償却額が、算出簿「(五)種目別生產費用計算表」の費目「(リ)成 園費」に記入されている。  (九)調査作物に關する現金出納帳 原簿「(九)調査作物に關する現金出納帳」には、調査作物に関係のある現金の出納 が記入されている。また、摘要欄には購入物及び販売物の種類、数量、用途等の詳細 が記載されている。原簿の備考によれば、年度始めにすでに調査作物のために準備さ れている肥料その他の購入現物があるときは、年度始めの日付で記帳を開始し、掛買 いにより現金の支払いがなかった場合も掛買いの日付で支払いを記入すること等、詳 しく指示がなされている。原簿には「科目」欄があるが、これは調査農家が記入する のではなく、のちに「肥料費」、「藥剤費」等の費目の分類が記入されている(注28)。 これらの「摘要」や「科目」から、算出簿「(四)所要勞賃額算出表」での「臨時 雇」の「支拂勞賃額」及び「牛又ハ馬」の「支拂額」と、「(五)種目別生產費用計算 表」の費目「(イ)種苗費」、「(ロ)肥料費」、「(ハ)藥剤費」、「(ニ)諸材料費」、「(ホ) 共同負擔費」、「(ヘ)小農具費」、「(ヌ)畜役費」、「(ヲ)借入地用役費(小作料)」、「(タ) 販賣費」が記入される。  (九)[附] 租稅及公課表 原簿(九)の附録である「租稅及公課表」には、調査農家は記入せず、調査指導員 が町村役場において調査を行い、調査作物に関係がある前年度実績の租税公課が記入 される(注29)。これらの数値は、算出簿「(五)種目別生產費用計算表」の費目「(ワ) 租稅公課」に記入されている。  (十)調査作物に關する作業及現物日記帳 原簿「(十)調査作物に關する作業及現物日記帳」には、附録「(一)作業分類表」 に従って分類された作業ごとに、作業の月日、作業日数、作業内容、作業によって生 産または消費した現物の数量や価額が記入されている。ここでの作業者に挙げられて いるのは、原簿「(一)家族及年雇表」で記入された者であり、合計値にはその作業者 の労働能力換算率を用いた「能力換算日数」が記入されている。この原簿の内容が、 算出簿「(三)所用勞働量集計表」や「(七)調査作物主生產物生產數量竝ニ副產物生 產價額算出表」に用いられている。牛馬を使役した場合は、その日数が算出簿「(四) 所要勞賃額算出表」の「牛又ハ馬」の「日數」と「(五)種目別生產費用計算表」の「(ヌ)

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12 畜役費」に記入される。また、附録「(二)農業作業別協定勞賃表」には、調査地域の 「協定勞賃及び協定牛馬賃借料」が記入されているが、これは算出簿「(四)所用勞賃 額算出表」で「家族勞働」を評価する際に用いられる。 4.主要農産物生産費調査原資料の保管状況 1)原資料の保管にかかわる調査項目と結果 ここでは、旧簿記研の書庫に保管されていた主要農産物生産費調査原資料の保管に かかわる調査結果について述べる。資料整理の過程で記録した内容は、表紙ならびに 各農家の原資料から判別可能な情報であり、以下のようなものとなる。 ① 調査品目 ② 年度 ③ 都道府県名 ④ 市郡名 ⑤ 町名 ⑥ 氏名 ⑦ 経営階層 ⑧ 自小作別 ⑨ 調査票の残存状況 整理の結果、3,202 戸、60 品目の個票の存在が確認された。「原簿」と「算出簿」 のいずれにも該当しない4つを除き(注30)、「原簿」と「算出簿」の両方が揃ってい る農家は2,216 戸(全体の 69.3%)であった。「算出簿」のみがあった農家は 705 戸 (同22.0%)、「原簿」のみが確認された農家が276 戸(同8.6%)であった(注31)。 また、記録された 3,202 戸のうち、「原簿」と「算出簿」のいずれにも該当しないも の4つを除いた3,198戸から計算すると、昭和 15年が 1,320戸(全体の 41.3%)、昭 和16年が1,331 戸(同41.6%)、昭和19年が427(同 13.4%)となっており、この 3か年で旧簿記研に所蔵された個票の96.2%を占めることが明らかとなった(注 32)。 次に、調査年ごとの都道府県別、経営階層別、自小作別の情報をまとめると以下の 通りになる。まず、都道府県別でみると、旧簿記研に所蔵されている個票はすべての 県を網羅している。北海道が 312 戸と一番多く、次いで、多い順に広島県、静岡県、 千葉県、愛媛県、栃木県・新潟県・愛知県、福岡県、長野県、青森県、埼玉県で 100 戸以上の調査農家の個票が残存していることが明らかになった(表4)。次に経営階層 別にみると、不明分 930を除き、上層が 720 戸、中層が 903戸、下層が 648 戸およ び中下層が1戸の計 2,272戸の調査農家の個票の残存が確認された(表5)。最後に、 自小作別では、不明分794を除き、自作が 1,594戸、小作が709戸、自小作と表記さ れたものが105戸の計2,408戸の調査農家の個票の残存が確認された(表6)。 2)品目別にみた資料の残存状況

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13 ここでは、本整理によって明らかとなった主要農産物生産費調査原資料の保管状況 と表1に示した調査戸数とを品目ごとに比較し、旧簿記研に残存している個票の特徴 を明らかにする。なお、記録の結果、昭和 20 年以降の個票は存在しなかったため、 以下の表7から表11では、昭和20年以降の調査戸数については割愛している。 (1)麦類の生産費調査 表7は、上述の個票が残存する農家戸数と表1とを、麦類について比較したもので ある(注33)。 まず注意しなければならないことは、主要農産物生産費調査の沿革で述べたように、 麦類(大麦、小麦、裸麦)の生産費調査が主要農産物生産費調査に加えられたのは昭 和16年からであり、昭和17年には、燕麦も加えて、農林省食糧管理局の麦類生産費 調査に移管されたことである。しかし、記録の結果、昭和 15 年には大麦と裸麦、昭 和 19 年には大麦と小麦の個票の残存が確認されている。この昭和 15 年および昭和 19 年の個票は、農林省から委託を受けた帝国農会が主要農産物生産費調査とは別に、 独自の立場で調査を行った個票である可能性が考えられる。 以上の可能性を踏まえ、帝国農会による調査農家戸数を母数として、旧簿記研に残 存している個票の残存状況を確認すると、後述する野菜・果実・工芸作物等において も、昭和15年、16年、19年に個票が集中していることが特徴の第1点である。 第2点目の特徴としては、昭和 15年については、大麦での調査農家の 42.2%、裸 麦での調査農家の26.9%、燕麦での調査戸数の32.3%の個票が旧簿記研に残存してい ることである。昭和 16 年については、燕麦の調査戸数の 56.9%の個票が残存してい る。昭和19年については、大麦の調査戸数が95戸に対して、残存率は51.6%とさら に高い比率を示している。小麦は昭和19年にのみ個票の存在が確認されている。 第3点目の特徴としては、大麦と小麦を除き、農林省食糧管理局に移管された昭和 17年以降の個票が旧簿記研には残存していないことである。 次に、各品目において、道府県別、経営階層別、自小作別からみた特徴をみてみる。 (以下、野菜・果実・工芸作物等においても別表1~別表4を参照のこと) ① 大麦 道府県別では、16の県で個票が残存しており、その中で19.0%を埼玉県の個票 が占めている。また、次に残存数が多い静岡県では、ほとんどの県が1回分の調 査年しかないのに対して、昭和15年と昭和19年の2回分が残っている。経営階 層別では、不明分を除いて、全体の 30%が中層となっている。年次別にみると、 中層の比率は昭和 15年で 56.5%、昭和16年で46.7%とさらに高い比率となって いる。自小作別にみると、不明分を除き、自作と小作がそれぞれ35.5%と 29.0% と近い割合の個票が残存している。資料の保存状況をみると、「原簿」と「算出簿」 のいずれも保存されているのは大麦の個票全体の54.5%となっている。 ② 裸麦 県別では、6つの県で個票の残存が確認され、長崎県が昭和15年の個票のみで あるが、全体の31.9%を占めている。次点は兵庫県で、唯一昭和 15年と 16年の 2回分の個票が残存している。経営階層別では、中層が全体の 44.7%を占めてお

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14 り、その比率は昭和 15 年、16年でも概ね同じ比率となっている。自小作別にみ ると、全体の 66.0%が自作の個票となっている。また、全体の約9割が昭和 15 年の個票であった。資料の保存状況については、「原簿」と「算出簿」のいずれも 保存されているのは、裸麦の個票全体の93.6%を占めている。 ③ 小麦 小麦についての個票は昭和19年しか残存が確認されていない。県別には、栃木 県と千葉県がそれぞれ全体の20%ずつを占めている。経営階層別では、ほとんど の個票に経営階層が記載されていなかった。自小作別では、自作の個票が全体の 23.5%を占めている。資料の保存状況をみると、その他資料の1つを除けば、「算 出簿」のみ保存が確認されており、小麦の個票全体の98.0%を占めている。 ④ 燕麦 県別には、北海道と青森県の個票のみが確認されており、その 91.4%が北海道 の個票であった。経営階層別では、上層が全体の44.8%、下層が 22.4%となって おり、その多くが昭和 16 年の個票となっている。自小作別では、全体の 55.2% が自作の個票であるが、調査年による隔たりが大きく、昭和15年では自作よりも 小作の個票の方が多い。資料の保存状況をみると、「原簿」と「算出簿」のいずれ も保存されているのは燕麦の個票全体の82.8%を占めている。 (2)野菜・果実・工芸作物等の生産費調査 表8~表11は、野菜・果実・工芸作物等の残存状況を示したものである(注34)。 第1の特徴として、旧簿記研に野菜・果実・工芸作物等の調査品目全体の81.2%を 占める個票が移管されている点である。燕麦を除く 68 品目のうち、個票の残存が確 認できなかったのは「甘藷、馬鈴薯、ひえ、小松菜、落花生、亜麻、黄麻、糸瓜、こ んにゃく芋、綿、とろろあおい、茶、たばこ」の13品目になる。 以下では、旧簿記研で残存が確認できた調査品目を種類ごとに分けて特徴をみてい く。なお、調査品目の種類は、「原簿」の「[附](一)作業分類表」(別添1)の分類 に依って行った。 ① 穀菽類(表8) 穀菽類に分類される調査品目は7品目あるが、そのうち「ひえ」を除く6品目 で個票が確認できた。前述のように、旧簿記研に残存している「主要農産物生産 費調査」の個票は、昭和15年・昭和16年・昭和19年に集中しているが、穀菽類 においては、昭和19年に調査戸数がない「菜豆」を除けば、3回分が揃っていな いのは、「粟」と「玉蜀黍」だけであり、残りの3品目では3回分の個票があった。 また、昭和 15年の「大豆」(残存率 51.1%)、昭和16年の「そば」(同63.2%) と「玉蜀黍」(同 76.4%)、昭和19年の「小豆」(同55.9%)と「そば」(同80.0%) については、調査戸数の半数以上の個票が旧簿記研に残存していることが明らか になった。 次に、都道府県別にみると、北海道、岩手県、長野県、熊本県で5品目の個票 が確認され、次いで青森県、宮崎県で4品目の個票が確認されている。品目ごと

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15 にみると、「大豆」については、15の道県での個票が残存している。北海道の個票 が一番多く、全体の22.6%を占めており、調査年も昭和16年と 19年の2回分が 残存している。次いで、岩手県と長崎県が続くが、どちらも昭和15年の個票のみ が残存している。複数の調査年の個票は、北海道のほかに長野県と熊本県、鹿児 島県で確認することができた。「小豆」については、11の道県での個票が確認され た。そのなかで、北海道と熊本県がそれぞれ全体の 31.4%を占め、昭和 16 年と 19年の2回分の個票の存在が確認された。「菜豆」は、北海道の個票のみ残存が確 認された。「粟」は、9 県での個票が確認され、そのなかで複数年の個票が確認さ れたのは 6 県になる。しかし、複数年で複数戸数の個票が確認されたのは青森県 のみであった。「玉蜀黍」では、15 の道県での個票が確認され、北海道が全体の 23.2%、次いで愛媛県が全体の 19.2%を占めている。昭和16年と 19年の複数年 の個票は、愛媛県と宮崎県で残存が確認されている。「そば」は、12の道県の個票 が存在し、北海道と新潟県で3回分の個票の確認がされている。 続いて、経営階層別に各品目を確認すると、不明分を除き、「玉蜀黍」のみが下 層の個票が全体の 36.4%と比率が高いが、「大豆」「小豆」「粟」「そば」では上層 (それぞれ36.8%、42.9%、33.3%、44.9%)から中層(それぞれ 31.1%、28.6%、 26.2%、24.3%)の順に比率が高い。また、「菜豆」では、中層の個票は確認され ていない。 自小作別にみると、すべての品目で自作が小作よりも個票が多いことが確認さ れた。年次別にみると品目によって残存している調査年の偏りが大きく、「大豆」 では、自作60 戸、小作 31戸の個票のうち、昭和 15年が自作 41戸、小作 27 戸 となっている。「玉蜀黍」の自作 66戸、小作22戸の個票は、昭和 16年が自作52 戸、小作21戸となっている。「そば」では、自作72戸の個票のうち、昭和 16年 が41戸となっている。 資料の保存状況をみると、「小豆」と「菜豆」を除き、穀菽類の各品目の個票全 体の約 7~8 割で、「原簿」と「算出簿」のいずれも保存されていることが確認で きる。「小豆」は、「算出簿」のみの保存されている比率が57.1%、「菜豆」は「原 簿」のみが保存されている比率が57.1%となっている。 ② 蔬菜類(表9) 蔬菜類に分類される調査品目は25品目と全調査品目のうち一番多くを占めるが、 そのうち 23品目で個票が確認できた。それら 23品目において、3回分の個票が 揃っている品目は、「豌豆」、「牛蒡」、「里芋」、「たまねぎ」の4品目であった。中 でも、「豌豆」は、各年産4割から6割の残存率となっている。一方、2回分や単 回分が残っている品目をみると、2回分で「大根」(残存率88.4%、42.4%)と「と まと」(同 73.3%、48.2%)が高い残存率となっており、単年度では「甜瓜」(同 72.0%)と「筍」(同 73.3%)、「ほうれん草」(同60.0%)で調査戸数の6割以上を 超える個票が収蔵されていたことがわかる。 都道府県別にみると、千葉県と愛知県、広島県で14品目の個票が確認されてお り、次いで新潟県と埼玉県で12品目、静岡県で11品目、東京都と神奈川県で10

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16 品目の個票が確認されている。より詳細にみると、「豌豆」は、10の道府県で個票 が残存しており、全体の18.3%を占める広島県と、全体の16.7%を占める静岡県 では3回分の個票が確認されている。「蚕豆」では、4県での個票が残存しており、 うち香川県のみ、2回分の個票が確認された。「胡瓜」は、18の都道府県での個票 が確認されている。そのうち、北海道が全体の 23.1%を占めているが、そのほと んどは昭和 15 年の個票となっている。「南瓜」は、9 県での個票が確認され、う ち複数年の個票は、山形県と茨城県、愛知県で確認された。「西瓜」は、12の都県 での個票が存在しており、全体の25.8%を占める愛知県のほか、茨城県、東京都、 新潟県、静岡県、愛媛県で2回分の個票が確認されている。「越瓜」については、 千葉県での個票が昭和 18 年についてのみ残存が確認された。「甜瓜」は、7 つの 道県で単年度分の個票が確認され、うち愛知県が全体の41.7%を占めている。「茄 子」は、19の道府県での個票の残存が確認され、全体の14.3%を占める愛知県で 2回分、全体の 11.9%を占める栃木県で3回分の個票が存在している。「とまと」 は、14 の都道県での個票があり、愛知県が全体の 16.7%を占めている。次いで、 同率で東京都と神奈川県が続くが、東京都が11戸の個票のうち 10戸が昭和 15年 であるのに対して、神奈川県では昭和15年が5戸、昭和16年が6戸の個票の残 存が確認された。「大根」は、野菜類の中で一番多く 25 の道県での個票が確認さ れ、うち 14 の道県で2回分が残存している。「かぶ」は、7 府県での個票が確認 され、いずれの府県もほぼ同数の個票となっている。「にんじん」は、昭和 15 年 のみで14の都道県での個票が確認された。北海道の個票が全体の 16.7%で一番多 く、次いで埼玉県と神奈川県が同じ 11.1%となっている。「牛蒡」は、19 の都道 県での個票が残存しており、愛媛県のみが昭和15年、16年、19年の3回分の個 票が確認されている。「扁蒲」では、栃木県の個票のみが昭和16年と19年の2回 分確認されている。「里芋」は、19県での個票を確認しており、栃木県、埼玉県、 千葉県、神奈川県、新潟県、静岡県で2回分の個票が残存している。「葱」は、17 都道府県での残存が確認され、うち11県で昭和15年、16年の2回分の個票があ る。「たまねぎ」は、7 道県の個票が残存しており、静岡県と愛媛県で昭和 15 年 と19年の2回分の個票が確認された。「甘藍」は、10都府県での個票が、それぞ れ単年度で残存が確認されている。「白菜」は、13の府県での個票が確認され、青 森県が全体の25.0%を占めているが、昭和 15年分のみであり、2回分が確認され たのは栃木県と静岡県であった。「みつば」と「ほうれん草」は、それぞれ東京都 での昭和 16 年の個票の残存が確認されている。「筍」では、広島県と徳島県で昭 和16年の個票のみが確認されているが、その 90.9%は徳島県の個票である。「蓮 根」では、5 県での個票が確認され、うち千葉県が全体の 53.1%を占め、かつ2 回分の個票が残存している。 次に、経営階層別にみると、「越瓜」と「筍」の個票では、経営階層の特定がで きなかった。また、「かぶ」では、1 戸の個票のみ下層であるのが確認されたが、 残りの 19 戸では階層が不明である。「ほうれん草」では、残存が確認された個票 は、中層のみであった。「みつば」の個票は、上層と中層がそれぞれ 1戸ずつ確認 された。残りの蔬菜類は、上・中・下の階層がすべて確認されている。そのうち、

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17 「豌豆」と「里芋」が、すべての階層で3回分の個票の残存が確認されている。 すべての階層での2回分の個票の残存が確認されたのは、「西瓜」、「とまと」、「大 根」、「扁蒲」、「葱」、「甘藍」、「白菜」、「蓮根」の8品目である。「牛蒡」は昭和 15 年、16 年についてはすべての階層での個票が残存しているが、昭和 19 年は下層 のみが確認されている。 自小作別では、経営階層別と同じく、「越瓜」と「筍」の個票では特定ができな かった。「かぶ」と「みつば」の個票は、自作農のみが残存している。すべての経 営階層で3回分の個票が確認された「豌豆」と「里芋」をみると、いずれも自作 農が各品目の残存する個票の約過半を占めている。すべての階層での2回分の個 票の残存が確認された8品目においても、自作農が小作農の個票を上回っている。 資料の保存状況をみると、「みつば」「ほうれん草」「筍」では、「原簿」と「算 出簿」のいずれもが保存されている比率が 100%であった。以下、順に「葱」が 91.8%、「甜瓜」が 91.7%、「大根」が 87.9%、「胡瓜」が 86.2%と、高い比率で 「原簿」と「算出簿」のいずれもが保存されている。逆に、「かぶ」は「原簿」の みが保存されている比率が95.0%と最も高かった。 なお、旧簿記研では、「高菜」という品目の個票が昭和15年で5つ確認された。 しかし、主要農産物生産費調査の調査品目に該当する品目がなく、同じアブラナ 科アブラナ属の「小松菜」が5戸あるが、昭和 17年と 18年にのみ調査戸数があ り、昭和15年には調査戸数に数値がないため、不明分とした。 ③ 果樹類(表10) 果樹類は、調査品目が 13品目あるうち、すべての品目において個票が確認でき た。また、4品目で3回分の個票の残存が確認された。果樹類のなかで残存する 個票が最も多いのは「葡萄」の 118 であるが、一番大きな特徴は、調査戸数が少 ないとはいえ、昭和 15年の「梅」と昭和 16 年の「支那梨」の旧簿記研所蔵での 残存率が 100%となっていることである。また、「ネーブルオレンジ」も昭和 15 年で97.1%と極めて高い残存率となっている。 都道府県別にみると、愛媛県で7品目、広島県で5品目の個票が確認されてい る。次いで、4 県で4品目、8 県で3品目、10 県で2品目の個票が確認されてい る。品目ごとにみると、「日本梨」が 9府県での個票が残存し、うち、昭和 15 年 と16年の千葉県、新潟県、静岡県、徳島県で、昭和 15年と19年の愛媛県で2回 分の個票が確認されている。一方で「西洋梨」では山形県、「支那梨」では長野県 の1つの県のみで昭和 15年と 16年の2回分の個票が確認されている。「蜜柑」で は、15府県での個票が残存している。うち複数戸の個票があるのは5県で、神奈 川県と和歌山県、広島県で6戸、佐賀県と熊本県で5戸の個票が確認されている。 「りんご」は、5 道県での個票が残存し、うち、青森県のみが昭和 15 年と 16 年 の2回分の個票の残存が確認されている。「桃」は、8 つの県で残存が確認されて おり、各県ほぼ同じ比率での個票となっている。「櫻桃」では、4 つの県での個票 が確認され、うち青森県と山形県、福島県の 3 つの県で2回分の個票が残存して いる。「柿」は、7県での個票が残存しており、新潟県と広島県で 44.2%の個票を

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18 占めている。「枇杷」は、8 県での個票が確認され、多い順に広島県、長崎県、千 葉県で 10戸以上の個票が残存しているが、いずれも昭和 16年の単年度分だけに なっている。「葡萄」は、12 道府県での個票が確認され、残存する個票が多い、 19戸の山梨県と岡山県、18戸の大阪府で2回分の個票が存在している。その他の 5 つの道県でも2回分の個票が確認されている。「ネーブルオレンジ」は、4 県で の個票が残存しており、そのうち広島県が53.8%の個票を占めている。「夏柑」は、 6県での個票が確認され、愛媛県が2回分で13と最も多い。福岡県では残存個票 が6と少ないが、3回分の個票が存在している。「梅」は、北海道での個票のみ残 存が確認された。 次に、経営階層別にみると、「支那梨」では階層の特定ができなかった。また、 「西洋梨」では上層の個票は確認されず、「梅」では中層の個票が確認されていな い。残存する個票が多い品目をみると、最も多い「葡萄」では、下層から上層へ の順に個票が多く、年次では昭和16年の個票が多い。次に多い「日本梨」も同じ く下層から上層への順に個票が多いが、中層と下層では、昭和15年の個票が多い ことが「葡萄」とは異なる。 自小作別にみると、不明分を除く「ネーブルオレンジ」の個票と、「梅」の個票 では自作農のみが確認されている。「支那梨」では小作農が確認されていない。残 りの品目では、自作と小作のいずれも確認されており、またいずれの品目でも自 作の残存個票が小作の残存個票を上回っている。複数の調査年の個票が残存して いる品目を、年次別の自作・小作の個票でみると、「日本梨」、「櫻桃」では昭和15 年の自作、小作の個票が多く、「枇杷」、「葡萄」では昭和 16 年の自作、小作の個 票が多い。 資料の保存状況をみると、「西洋梨」、「りんご」、「梅」で「原簿」と「算出簿」 のいずれもが100%保存されている。また、「柿」、「蜜柑」、「櫻桃」、「葡萄」、「ネ ーブルオレンジ」でも90%以上で「原簿」と「算出簿」のいずれもが保存されて おり、他の種類の作目と比べて、いずれの個票も保存されている品目数が多い。 ④ 特用作物(表11) 特用作物については、調査品目が 21 品目あるうち、13 品目において個票が確 認できた。「藺」では、昭和15、16、18、19年の4回分の個票の残存が確認され た。「菜種」においては、5回分の個票が確認されているが、そのうちの1回は昭 和14年のもので「主要農産物生産費調査」の開始以前となり、帝国農会の「重要 農産物生産費調査」においても昭和14年の「菜種」の調査戸数は確認できなかっ た。また、昭和19年の調査戸数が 4戸に対して、旧簿記研で所蔵されていた「菜 種」と品目が付いた農家戸数が 59 戸となっており、数値の差が大き過ぎるため、 注意が必要である。また、「はっか」についても、昭和 19 年に 4 戸分が残存して いるが、調査戸数は確認されていない。その他では、「除虫菊」で3回分の個票が 揃っていることが確認できた。 次に、特用作物においても、昭和 15年の「胡麻」、昭和 17 年の「はっか」、昭 和19年の「れんげ種子」において、旧簿記研の残存率が 100%であることが確認

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19 できている。 続いて、都道府県別に各品目をみると、「菜種」は 17 の道県で残存が確認され ている。そのうちで福岡県が個票の 31.1%を占めており、昭和 15年、16年、17 年、19 年で個票が確認できたが、前述の理由より昭和 19 年の個票には注意が必 要である。次いで、福井県と熊本県が同率で残存個票が多いが、熊本県には昭和 14年のものを含んでおり、これも精査が必要と考えられる。「胡麻」は、3つの県 で同数の個票が残っており、年次別にみても各県の個票の残存は同じになってい る。「大麻」では、5 県での個票が確認され、栃木県のみが2回分の個票が残存し ており、残存個票の64.7%を占めている。「苧麻」では、8県での個票の残存が確 認され、個票の残存数は宮崎県が一番多く、次いで福岡県と鹿児島県が同数とな っている。「除虫菊」は、5県での個票が残存しており、北海道が43.1%と最も高 い比率となっているが、昭和16年の個票のみ確認されている。2回分の個票が確 認されたのは、和歌山県と愛媛県であり、うち愛媛県は北海道に次いで多く、「除 虫菊」の個票の25.5%を占めている。「はっか」は、3県での個票の残存が確認さ れ、そのうち北海道が65.2%を占めている。「藺」は、6つの県で個票が残存して おり、そのなかで岡山県の48.6%と広島県の22.9%とで、藺の個票の71.5%を占 めている。「七島藺」は、固有の産地である大分県や沖縄県を含む3県での個票の 残存が確認されている。「杞柳」は、3 県での個票が確認され、そのなかで長野県 が68.2%を占めている。「三椏」は、昭和 19年の個票が3県で残存している。そ のうち高知県の個票が51.6%を占めている。「楮」は、島根県と高知県の2県での 個票の残存が確認されている。「花百合」の個票は、4 県で確認されている。個票 の残存数では沖縄県が一番多い。なお、沖縄県の個票が確認されているのは調査 全体で「七草藺」と「花百合」のみである。「れんげ種子」では、岐阜県での個票 が昭和19年のみ残存している。 次に、経営階層別にみると、「れんげ種子」を除き、特用作物のすべてで三階層 が確認されている。4回分の個票が残存している「藺」では、昭和15、16年の不 明分24の個票を除いて、4回分の個票での経営階層が特定されている。また、旧 簿記研に収蔵される昭和17年の個票の残存率が100%の「はっか」では、すべて の個票で経営階層が特定されている。同じく昭和19年の個票の残存率が100%の 「れんげ種子」では、上層は確認されていないが、残存率が 100%であるから中 層と下層のみで構成されていたと考えられる。 自小作別にみてみると、「楮」、「杞柳」、「藺」では自小作と書かれた個票は確認 できているが、小作の個票の存在は確認できておらず、その他の品目では、いず れも自作と小作の個票の存在を確認している。品目内のすべての個票で、不明分 なく自作と小作の確認ができているのは、「はっか」と「三椏」、「れんげ種子」の 3品目である。複数回の個票が残存している品目について年次別に分布をみると、 「胡麻」では昭和15年が最も多く残存し、自作・小作のいずれの個票も確認でき る。「大麻」と「藺」では昭和 16 年に、「はっか」は昭和 17年に、自作、小作が 確認できる個票が最も多い。「菜種」では、昭和 17 年に自作が確認できる個票が 最も多いが、小作と確認できる個票は昭和19年に最も多い。ただし、前述のよう

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20 に、昭和19年の数には注意を要する。 資料の保存状況では、「胡麻」が「原簿」と「算出簿」のいずれも100%保存さ れており、「苧麻」と「杞柳」でも95%以上で2つの個票が揃っている。しかし、 「はっか」「三椏」「楮」「れんげ種子」では、「算出簿」のみ保存されていること が確認された。 5.おわりに 以上、今回行った戦前期の「主要農産物生産費調査」の個票の所蔵状況について、 主な結果をまとめると以下のようになる。 第1に、旧簿記研に収蔵されている「主要農産物生産費調査」の個票には、「原簿」 と「原簿」を集計した「算出簿」が存在し、それらは、年次的に昭和15年、16年、 19年の3カ年に集中しており、3カ年で全体の96.2%を占めることが確認された。 第2に、旧簿記研に残存する個票は、すべての都道府県を網羅していること、確認 される経営階層別には上層・中層・下層のなかで中層が一番多いこと、そして自小作 別では自作が小作の2倍強、残存していることが確認された。 第3に、旧簿記研に残存する主要農産物生産費調査の個票のなかには、農林省から 帝国農会が委託を受けた「主要農産物生産費調査」の個票以外に、帝国農会が独自に 調査を行った麦類の個票が含まれる可能性があることが明らかとなった。 最後に、今後の課題について述べてむすびとする。 第1は、麦類の生産費について、昭和17年の食糧管理法の制定により、農林省は、 帝国農会への委嘱をやめ、食糧管理局による独自調査を行うこととなった。この農林 省による調査がどのようなものであったのかは、つまびらかにされていない。本調査 により、京都大学に残されている資料は、帝国農会が行った調査であることが明らか となったが、その比較について、引き続き、調査を継続することで明らかにしたい。 第2は、異時点間の生産効率性の比較である。主要農産物生産費調査は、戦前期の 細かい品目における投入・産出がわかる貴重な資料である。戦前期の投入産出関係を 戦後と比較することができれば、当時の技術水準を細かく見ることができる。比較可 能な品目を選び、生産効率性の比較を行うことも、今後の課題としたい。 最後に、第3は、主要農産物生産費調査で採用された農業簿記概念についてである。 主要農産物生産費調査の実施にあたっては、京都帝国大学教授の大槻正男が大きく関 与していたことが明らかとなっている。大槻は、農林省農家経済調査の昭和 17 年か らの改正にも大きく関わっており、両者の調査項目の農業簿記的特質についても、今 後明らかにしていきたい。 【注】 1)「国立国会図書館デジタルコレクション」では、昭和 15 年と昭和 16 年、昭和 17年の「農林省委嘱 農産物生產費調査」を見ることができる。http://dl.ndl.go.jp/

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21 (2017年 12月28日アクセス)(以下、帝国農会調査部(1943)と表記する) 2)野田(2013)、p.i。 3)同上、p.29。 4)同上、pp.32-33。 5)必需野菜に指定されたのは「大根・蕪菁・にんじん・牛蒡・結球白菜・其他ノ 漬菜・甘藍・ほうれん草・葱・玉葱・茄子・蕃茄・胡瓜・南瓜・菜豆・豌豆・蚕豆」 である。戦後日本の食料・農業・農村編集委員会(2003)p.121。 6)野田(2013)、pp.35-37。 7)昭和13年7月の全国経済部長会議において、農産物は、①「需給推算による生 産目標を定めて必ず一定の生産を確保する」米麦等主要食糧、②輸出(外貨獲得) のために増産する「茶・生糸・菜種・除虫菊・百合根等」、③「現状維持場合によ っては減少も已むなきとす」る粟・稗等、④状況によっては「生産を制限、禁止す る」園芸作物という4つのカテゴリーに区別して、それぞれに戦略的な位置づけを 与えられた。戦後日本の食料・農業・農村編集委員会(2003)、p.26。 8)資料の概要と特徴については、石橋幸雄(1960)、pp.45-60 を参照した。 9)「昭和10 年に帝国農会が一定の調査様式を定めて「主要農産物生産費調査」の 名称で実施することになったが、甘藷・馬鈴薯を除いては、いずれも調査戸数が数 戸程度で、全く事例調査の域を出なかった」。加用信文(1977)、p.280。 10)帝国農会調査部(1943)から確認できる「農林省委嘱 農産物生產費調査 昭 和 16 年 小麥」では、「本書は戦時經済政策の基礎資料を得る目的を以て本會並系 統農會相協力し遂(筆者注:「遂」は旧字体)行しつヽある重要農産物生產物調査 中昭和 16 年、15 年、14 年產小麥生產費調査の成績慨要である。」と記載がある。 一方で、帝国農会調査部編(1943)から確認できる「麥類生產費調査 昭和 17 年 産」の表紙には、農林省委嘱の記載はない。http://dl.ndl.go.jp/(2018 年 3 月 25 日アクセス) 11)「17年に食糧管理法が制定され、農林省食糧管理局が本格的な麦類生産費調査 を開始するのに対抗して、再び帝農方式に戻して実施することにな」った。農林省 統計情報部(1975)、p.88。ただし、昭和 18年には農業団体法が公布され、農会・ 産業組合・養蚕組合・畜産組合・茶業組合の 5 団体は統合して農業会が成立する。 帝国農会史稿編纂会(1972)、p.809。そのため、昭和18年産の麦類生産費調査は、 全 国 農 業 会 調 査 部 の 名 称 で 発 行 さ れ て い る 。 全 国 農 業 会 調 査 部 編 (1943) http://dl.ndl.go.jp/(2018年5月25日アクセス) 12)食糧管理局による麦類生産費調査は、食糧庁(1950)としてまとめられてい る。 13)農林省による生産費調査は、「その調査戸数及び調査結果については、その当 時 公 開 さ れ ず 、 戦 後 に も 公 開 さ れ な い ま ま に 終 わ っ て い る 」。 農 林 省 統 計 情 報 部 (1975)、p.93。 14)同上、p.93。 15)昭和 8年からの帝国農会による調査を、注 9の加用信文(1977)、p.280では 「主要農産物生産費調査」、農林省統計情報部(1975)p.93では「主要農作物経済

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